邂逅の時は、意外にも近くに転がっている。【1】 「行っくよー!」 「おうっ」 じりじりと皮膚を焼く太陽の下、 いつものグラウンドで対峙した二人はいつもと同じ事をしていた。 そして、勢いよく投げたボールは見事に真夏の空に吸収されていった。 「あー暑いっ」 「夏だからなぁー、」 野球帰り、今年最高の真夏日に朝昼ぶっ続けはさすがにきつかったみたい。 (でも、功介がこんな長いことつき合ってくれるなんて、) 珍しい、・・というかあり得ない。 昨日の夕方、ケータイで誘われた時は勉強とこの暑さで頭をやられたのかと、ちょっと本気で思った。 それだけ心配されているってことだろうか。 確かに、千昭が帰っちゃってちょっと(かなり)落ち込んだけど。 それとも、・・ (功介も表には余り出さないけど、やっぱり寂しいのかな?) 「功介」 「ん?」 「ありがと、野球つきあってくれて。」 目を見開かれた。 (ひどい、そんなに驚かなくてもいいじゃない。) そんな事を思っていると、頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でられた。 「ちょっ、功介!」 「やー、良かったぜ。元気出てきたみたいだな。」 今度はわたしが目を真ん丸にする番で。 やっぱりバレバレだったみたい。 「真琴は分かり易いからな。」 「うっ、い、いいじゃない!・・それよりかき氷でも食べて帰ろうよ。」 少し気恥ずかしくて話題を逸らす。食べたかったのは本当だったけど。 カーブミラーがたってる角を左に曲がって少し行くと、人気の甘味処にでるから。 「お前、・・『やばいやばい!ちょっと体重計壊れてるー!』とか言って騒いでたのはどうしたんだよ。」 しまった、墓穴を掘ったかもしれない。 「あ、あれは!」 「結局、壊れてなかったんだろう?」 「うるさいわねっ、いいのちょっとくらいなら!」 こうなったらもうやけくそ! 体重が何だ、今はこの蒸し暑さの方がもっと大敵なんだから。 「へいへい。」 後で泣いてもしらねぇからな。 小言のように、けれど正論過ぎるほど正論な事を言って功介は左に曲がった。 「ほら、早く行くぞ。夜くらいは勉強しなきゃなんねーからな。」 「功介、・・・・あんた本当に高校生?」 「何言ってる、至極まっとうな高校生活を営んでるだろうが。」 「えーっ」 わたしも後れを取らないように角を曲がる。 と――。振り返った。 「真琴ー、どうした。」 「あ、ううん。なんでもない。」 誰かに見られている、・・ような気がした。 気がしただけで、実際後ろには誰もいなかったけど。 (おっかしいなぁ。見間違い?) ミラーには確かに誰か、遠目だったから性別も分からなかったけど、映っていたのに。 (久しぶりでちょっと疲れてるのかな、) 「ちょっと功介!置いていかないでよ。」 「早くしろよーっ。」 功介に急かされて、わたしは大好きなかき氷への道を急いだ。 |