悠舜 独白 , 一の宰相になって ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 華が舞う ひらひらと、蝶のように それはまさに、長い旅路を祝福するように ―――――――これからの波乱を予知するように もしも祈る事が赦されるのであれば、貴女にあらん限りの幸福を。 『宰相を辞めろ、死ぬぞ。』 友に言われた言葉、言わせてしまった言葉。 知ってる。 傲岸不遜・唯我独尊な彼が本当はとても恥ずかしがり屋で、 気に入らない相手にはどこまでの冷徹だけど、けれど心を許した相手には不器用ながら優しさ見せる事を。 未だ年若く不安定な王の宰相になった事を、後悔などしない。 それは他の誰でもない、自分のために決めた事だから。――――― けれど。 「鳳珠も、怒っているのでしょうかね。」 あの美しい友も、・ ・ ・ ・ ・ 口には出さないけれど、そうなのかもしれない。 何せ自分には前科があるから、その事も後悔した事はないけれど。 ―――――――― 茶州、 物理的にも、心境的にも。とても遠い場所。 行こうと思えばたどり着く事は容易いだろうけど、 けれどやはり今の、宰相という地位を持つこの身にとっては遥か彼方であり。 余計なお世話だと知っていても、思いを馳せずにはいられない。 あの元気が取り柄の元上司は、州官達は? 彼は、彼女は、お元気ですか? 風邪などひいていませんか? 暖かに吹く風にほんの時々だけれど、そう問い掛けるのはおそらく私だけしか知らない事。 無用な心配だと分かっていても、やはり彼らの息災を願がってしまう。 それほどまでに一〇年という月日は、 そして幼く優秀な上司達と過ごした一年は自分にとってとても長く貴重なものだったのだから。 こうして全てが過ぎ去ってみると、死と隣り合わせの日々がとても懐かしく感じる。 まぁそう思えるのも、あの破天荒な上司とそのお師匠殿のおかげなのだが。 でなければ、私などとうに茶家に暗殺されていたでしょうからね この足だけのせいにする気はない、これまでの事も、これからの事も。 全く、私はどこまで我が儘なんでしょうね 年下の友人達に凛に心配をかけて、主上にまで勘づかれてしまって、 ・ ・ ・ ・ それでも進み続けるなど、なんて自分勝手な。 けれど、それでいい、と思うのだ。 昔の自分なら、すでに諦めていたものを。諦めなくて良いと言ってくれたのは果たして誰だったのか。 自然に頬が緩む、 ここが執務室で良かった。でなければ、きっと顔を見た人達をたいそう気味悪がらせただろうから。 眉間に皺を寄せ涙腺が緩みながら、口角を上げて笑いを堪えている尚書令 ・ ・ ――― かなり気持ち悪いですねぇ うら若い女性ならまだしも、三十路過ぎた男の涙など見たくはないし、自分だってそんもの見せたくはない。 唯一人例外を上げるなら黄戸部尚書、鳳珠だが、彼の場合全く一般人とは別格なので考えないでおこう。 幸せ、だと思う。 他人の迷惑など顧みず突き進め、と言ってくれる人達がいることを。 唯でさえ悪い脚で面倒をかけるのだから、と。それ以外の世話は決してかけまいと必死に自分を押しつけていた。 そんな自分を一蹴して明るい日向に連れ出してくれた者達がいることを。 彼らを何度、裏切ってきたことだろう。あと何度、裏切ることになるだろう。 けれど後悔はしない、決して。 それは自分のために、そして、その道を教えてくれた彼らのために。 だから ・ ・ ・ ・ ・ ・ せめてもの償いにこの言葉を贈ろう。 「黎深、鳳珠、・ ・ ・ ・ 私は、とても幸せです。」 本当に幸せ者です、 「あなた方のおかげです。だから、 」 ただこの言葉を贈ろう、私の生涯の親友達に。
date:2006/09/24 By 蔡岐
【宿花 , "もしも祈る事が赦されるのであれば、貴女にあらん限りの幸福を。" 】 |