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名探偵コナン(少年探偵団)
彩雲国物語(藍兄弟)
彩雲国物語(楸絳+劉輝)   2006/12
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彩雲国物語(楸瑛+絳攸)
名探偵コナン(平次×和葉)   2007/03
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名探偵コナン(平次×和葉)
戦国BASARA(現代学園もの)
遙かなる時空の中で(将臣←望美)   2008/08








名探偵コナン (少年探偵団)

高校生にもなって動物園かよ、とはもう思わなくなった。
出かける事が元々嫌いではなかった、というのもあるかもしれない。
けれど…………


「灰原さぁ〜〜んっ!」
前方から光彦の声。
ちなみに灰原は、今俺の隣を歩いている。
何事も一歩下がって冷静に判断するこいつは、ほとんど場合列の一番後ろを行くので、 必然的に俺たちはクラスの最後尾になっていた。
『たまには、歩美達と並んで歩いてみたらどうだ?』という勧めに、 『元気溌剌で疲れを知らないあの子達に付き合えるほど、私若くないわ』 と返されて以来、その事には言及しないようにしている。
クラスでもそれは既に暗黙の了解、と化していた。

1.灰原さんの姿が見えなかったら、すみやかに担任に告げる事。
2.彼女の前やその周りの人は、数分おきに後ろにいるかどうか確認する事。
などなど。

聞いた時は、思わず「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げてしまうほどで。
けれど。
それは、一見独りな風な灰原が、確実にクラスに溶け込み受け入れられているという証だった。

「呼んでるぜ、」
「そうね」
(それだけかよ、)
心中で突っ込んで、横を見る。
ゆっくりとコアラを観察していた。
俺の視線に気づくと、「何?」と目で問い掛けてきて、 やっぱりこういう事はしっかり言った方がよいのだろうか?と思案していると。

「哀ちゃーんっ!!」
またもや前方から、今度は歩美が呼んできた。
「来て来て!ゾウさんがね、今からショーをするんだってっ!」
嬉しそうに手を振りながら、大声で告げる彼女に俺が答えようとすると。
「分かったわ」
それより早く隣から聞こえた声にばっと横を向く。
歩美に比べたらずいぶんと小さい声だけれど、 それでもこいつにしたらかなり珍しい部類にはいるもので。
その返事を受けてにっこりと笑って頷いた少女に、やはり女友達の力は強い、と実感した。
隣では灰原も僅かに頬を綻ばせていて、それはなおさら。

「コナンーっ、お前もだぞ!」
元太の声。
「分ぁーってるよっ、今行く!行くぞ、灰原」
「ええ、」
そう言うと二人で最前列を行く彼らのもとに走り出す。


高校生にもなって小学校で授業を受けたり遠足へ行く事が、苦ではなくなって、 むしろ少し、楽しみにするようになった。
そこでは、ほんの僅かで注意してみていないと見落としてしまうけれど、 あいつの、灰原も素の姿が見えるから。

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彩雲国物語 (藍兄弟)

「ふむ、」
「…………龍蓮、退きなさい」
楸瑛は帰ってきた途端に自分の膝を占領する弟の頭に話しかけた。
久々に顔を見て、心配無用と分かっていても、やはり「ああ、元気だな」 と安心して、一般の兄の心境とはこういう物なのかと実感したのは、ほんのつかの間。
そんな微笑ましさは文字通り一瞬にして消え失せてしまった。

なおも兄の膝の上でふんぞり返って「ほう、」だとか「ああ」だとかぶつぶつ呟いている天才=変人を、 小突き落としたくなるのをどうにか堪えながら、もう一度辛抱強く問い掛けた。
「龍蓮、なんだって、私が君に膝枕しなくちゃならないんだい」
すると。
「したかったから、」
とある意味率直な意見が返ってきた。
「したかったからって、……」
(じゃあ誰か別の人にしてもらいなさい、というかどうして私なんだ)
思わず頭を抱える。

もしかして、これは新手の悪戯か何かなのか。
否、鬼畜三兄ならともかく龍蓮はそんな達の悪い事はしないだろう。
本人凄く真面目で、人を混乱に陥れるのがこのすぐ下の弟の困ったところなのだが。
「ならもう、十分堪能しただろう。そろそろ退いてくれないかな」
半ば懇願めいて言う。
するとようやく龍蓮は起きあがって、寝台の端に座る自分の横にちょこんと腰を下ろし、
「うむ、……」
と、また考え込んでしまった。
「さっきからどうしたんだい?」
「………………愚兄其の四の膝は、案外寝心地がよいのだな」

「はっ?」
(何?)
なにやら不気味な単語を聴いた気がする。
素っ頓狂な声を上げた私に龍蓮はむぅ、と眉を顰めた。
「自ら訊いておきながら、そのような声を出すとは。
相変わらず人格未形成甚だしいな、愚兄其の四」
「お前ね……」
(まぁ確かに、私も少し驚きすぎだったかもしれないけれど)
だとしても、仮にも武官の膝枕が気持ちよいなどと、一体誰が思うだろう。
実際に試した剛胆者が(龍蓮以外)いるかどうかも不明だ。

(それにしても、)
「何故膝枕をしたいだなんて、思ったんだい」
訊いてみたかった。
これが主上なら十中八九霄太子の入れ知恵のせいだろうけれど、 龍蓮はまた違った意味で旅先で変な事を仕入れてくるのだ。
「我が心の友其の三の、」
「珀明君?」
(吏部の彼?)
私の愛しい恋人と同じ職場で働く、龍蓮と同期の青年。
今は茶州にいる2人も合わせて3人、 彼らは生まれてこの方ずっと一人だった龍蓮が初めて友と、『心の友』と呼び慕った子達で。
彼らには本当に感謝している、おそらくは藍州にいる兄達も。
この広い世界でたった一人でふらふら漂っていた龍蓮を、 地にしっかりと繋ぎ止めて、弟の光となってくれた子達だから。
同時に、なにより申し訳ないとも、思っているのだけれど。

「うむ……珀明の膝枕は、気持ちよかった」
「……………………」
(龍蓮、……君は、友達に何をさせているのかな)
どうやらまた、彼らへの詫びが1つ増えたらしい。
いくら弟の甘い彼でも、男が膝枕を快く了承するとは思えない。
影月君なら、………まぁ苦笑して許してくれそうだが、珀明君に限ってはあり得ないだろう。
ごり押ししたのか、私のように勝手に乗ったのか。

(明日お詫びを言っておこう)
「ちなみに、それはいつの事?」
「昨日だ、」
即答する弟に本気で頭が痛くなってきた。
しかも額を抑える私を気にせず、龍蓮はなにやらまたぶつぶつと言いだした。
「ん?何だって、」
なにか今、聞き捨てならない言葉を聞いた気が。
「なんだ愚兄、その年でついに耳まで耄碌したか」
「龍蓮、質問に答えなさい」
「やれやれ…………、 『今度は、心の友其の一…其の二の膝枕も試してみたいものだ。ああ、四人でし合うのも良いな』 と言ったのだ。
私だけ心の友其の三の膝枕を堪能したのでは、悪いだろう」

(いやいやいやいや、)
どうしてそんな考えになるのか。
恐ろしすぎて聞けもしない。
「ちなみに珀明君はなんて?」
「訊いていない」
「何故?」
「…………止めろ、と言われそうだから」
分かっているのなら言わないで欲しい、少なくとも今回で寿命が半年は短くなった。
「龍蓮、お願いだから間違っても外でそんな事言わないでくれ」
(実行も、絶対にしないで)
「むっ、」
「むっ、じゃない。影月君や珀明君に迷惑がかかってもいいのかい」
「むぅ…………致し方ない」

はぁ、取り敢えず最悪の事態は回避できた。
秀麗殿の膝枕なんて、考えただけでも恐ろしい。
黎深様が知ったらまず間違いなく影を放って、何がなんでも潰しに来るだろう。
あの紅家家人にもなんて言われるか。

(あんなの、死んでも敵に回したくない)
龍蓮はうまく逃げおおせるだろうから、結局被害者は私になるのだろうし。
「愚兄其の四」
耳元で呼ばれてはっと其方へ顔を向けると、異常に近くに顔があって息を呑む。
「寝る」
「…………は?」
反応した時は既に遅く。
龍蓮は再び膝を占拠すると、驚くべき早さで、寝た。
「ちょ、龍蓮っ」
揺すってみても起きない。余りのことに溜息さえ出ない。

「まったく」
結局この弟はとことんまで訳が分からない。なんてやっかいなんだろう。
(けれど、まあこういうのもたまにはいいのかな)
友達3人以外に甘えることは、本当に不器用で。
そんな彼が構って欲しい、というのだから、黙って膝を貸すのも兄としての仕事?なのかもしれない。

龍蓮の柔らかな曲線を描く、未だ結われたままの髪を撫でて。
そっと苦笑した。

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彩雲国物語 (楸絳+劉輝)

楸瑛はどこかの部署の侍郎ほどではないけれど、 最近何かと忙しかった日々を思い出しながら一服していた。
ちなみにすぐに主上の執務室へ行かないのは、 毎度の大将軍二人の諍いに巻き込まれ、柄にもなくかなり体力を消耗したから。

――――――――の、時。

「楸瑛っ、助けてくれっ!絳攸が!!」
のどかな気分を一瞬にして吹き飛ばしてくれた張本人は、 額から大粒の汗を掻いた鬼気迫る形相で執務室に飛び込んできた。
‘絳攸’という単語に僅かに腰を浮かしかけて、けれどそれはすぐに杞憂に終わった。

「主上っ!!」
先方から遅れること、数秒。
扉を蹴破るようにして入ってきたのは、つい先ほどまで脳裏に浮かんでいた人で。
「絳攸…………」
ぽつり、と呟いた。

二人はといえば、部屋の主そっちのけでああだこうだと言い、 時々、否、かなりの頻度で劉輝の頭が殴られていた。

要約すると、楸瑛が最近忙しくまともに主上の元に顔を出せていなかった間、 絳攸がいつにもまして仕事を増やし、また劉輝がここぞとばかりに逃亡したせいで、 溜まりに溜まった書簡がついに雪崩を起こした、らしい。
(う〜ん、久々だね。この感覚も)
この二週間、結構血腥い事に関わってきたせいか。
本人達にしてみたら甚だ不本意だろうが、楸瑛にはこの光景がすごく微笑ましいものに見える。
それが表情にも滲んでいたらしく、
「楸瑛っ!笑ってないで助けてくれっ!」
「常春っ、何ニヤニヤしてる!!」
と主上と絳攸、両方から嘆願と怒鳴り声が飛んで来、ついでに絳攸からは書簡もプラスされた。

「分かったよ。主上、私も手伝いますから早めに終わらせましょう」
「本当かっ!!」
「おい、」
不機嫌顔で視線をくれる友人をなだめて、主上を見遣る。
「ええ、ただし……」
そこで一度言葉を切った。

「主上が逃亡した場合、直ちに帰らせて頂きますよ」
(絳攸共々、)
最後は心中で呟いてにっこりと笑顔を向ける。
と同時に胸から腰の辺りに直撃した物体に、目を見開いた。
「ありがとうなのだっ、楸瑛!!余は楸瑛が大好きだぞっ!!!」
「は?」
思わず呟いてしまった後、視線を上げると、 何故かますます仏頂面を深くした絳攸と目があって。
瞬時に逸らされてしまった瞳に、ようやく納得がいった。
体中から笑いが込み上げてくる。

「しゅうえい?」
純粋に不思議そうな目に見上げられて、思わずすぐ目の前の彼の頭に手を置いてしまった。
突き刺さるような視線に苦笑を漏らし、 撫でていた手を引くと劉輝の身体を持ち上げて離れさせた。
「ふふふ、私も主上のことが好きですよ」
けれど、

そこでついっと扉の前に立つ彼に視線をくれて、微笑んだ。
「私が愛を囁くのは、絳攸だけですので」
その瞬間、先ほどの3倍のスピードで放たれた短剣も、すっきりと楸瑛の手の中に収まっていた。

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彩雲国物語 (楸瑛+絳攸)

「絳攸、」
「なんだ、万年常春馬鹿男」
「酷いな、………それより、君。その匂い、どこでつけてきたんだい?」
「匂い?何の事だ?」
「ん、君から、…………うん、まぁ変わった香りがするというか、」
「変わった香り?」
「う〜ん。否、君でなければ別に普通なのだけれど」
「は?」
「私であれば問題ないんだけれどね」

「おい、はっきり言え。………というか、何なんだ。そのにやけた顔は」
「いや、その。ようやく君も興味を持ってくれるようになったのか、と思うとね」
「だから!さっきから何の事だと聞いている!!」
「言っても、良いのかい?」
「さっさと言えっ!!!」

「はは、……絳攸、君の上着からね、香の香りがしてくるんだよ」
「どういう事だ?そんな物別に、…………」
「詳しく言えば、最近花街で流行っている香と同じ、ね。妓女達がよくつけているよ」

「っ…………!!」
「嬉しいよ、君にもようやく春が来たんだね」
「ちっ、違う!そんなわけっ!」
「じゃあ何故?今日は後宮になんて迷い込んでないだろうに」
「………………」
「ちょ、絳攸。少し落ち着いて」
「お、俺は…………」

「すまない、私が軽薄だった。 大丈夫、誰も君が毎日忙しい中、そんな事をしているとは思っていないから」
「っ……しゅうえぃ、」
「あぁ〜、大丈夫だって。百合姫様の香が移ったのだよ、きっと」
「……百合様とは、4日前からお会いしていない」
「…………たまたま花街へ行ったとか」
「仕事が溜まっていて、昨日から城下へは行っていない」

「「……………………」」

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名探偵コナン (平和)

「平次っ」
「嫌」
「嫌、やないわ!ほら、早行かんと!間に合わへんよ」

「お前はそれでええんか?」
「うっ、け、けど。しゃあないやん。
ほら早行ってちゃっちゃと事件、解決して来て。それまでくらいやったら、……待てるし」
「………………」
「もう!平次っ!」

「……分かった、そこらで適当に暇潰しとけ。すぐに終わらせてくるわ」
「うん、」

「――――和葉」
「ん?何、平じ…………っ//」

「約束破ってまうからな、……お詫び」
「っ……なっ、何がお詫びよ!こ、こんな所で」
「アホ、そやから意味あるんやろっ」
「さ、さっさと行って来っ!」
「へいへい」

「はよ帰って来てや!」
「任せとけや、俺を誰やと思てんねん」

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名探偵コナン (平和)

「何やってんの、平次」

ギクッ、と音がしそうなほど驚いた。
ひっさびさに本気の驚きで肩が震えたのを感じる。

「よ、よぉ和葉、奇遇やのぉー」
「……それで?」
にこにこ顔で振り返っては見たが、さすがは幼馴染みというか手練れというか、和葉はしつこく追求してくる。
普通ここは胡散臭くても気づかない振りをして話題を変えるところである。
平次が立ち止まって、なおかつ少し身を乗り出して、熱心に見ていたのは化粧品が所狭しと並ぶブース、 ……しかも日焼け止めとか男物の香水なんかが置いてあるところでなく、 口紅やリップグロスの棚だった。
怪訝を通り越して、気色の悪いものでも見るような和葉の目に、 さすがの西の高校生探偵も萎縮せずには居られない。

「で?なんなん平次、さっきからずうっとここにおるようやけど?」
「見とったんかい!!」
「違うわあほっ、由理子がぼーっと突っ立ってるあんたを見つけただけや」

そういや今日武田等と買い物行くゆうてたなぁ、と昨日の会話を思い出しながら、 同時にどうやってこの場を切り抜けるか思案する。
今のところ、名案は出てきていない。

「武田とかはどこ行ってん」
「あんた見たってあたしに言うた後、先西館に行ってしもたわ」
「せやったらさっさと行けや」
「あんたが、なんでここに居るんか白状したらね」

……どうやら、最初の作戦は失敗らしい。
本当にこういう時長年一緒にいる人間はやりづらい。
他にもこの場を切り抜ける案は出ていたが、なんだか結構馬鹿らしくなってきた。
そもそも言い訳する理由も、よく考えたら別にない。
これ以上、ここで、和葉と、相対して、話している方がよっぽど精神衛生上やばい気がする。

「そんなに言いたないん?」
首を傾げて、思いがけず寂しそうな表情の和葉に吸い寄せられそうになる体を理性で押しとどめた。
「や、このポスターがな」
「ポスター?」
鸚鵡返しに言葉を発する女をこれほど愛しいと思うなど、幼い頃は考えもしなかった。

「この女優が塗っとるやつ、グロスいうんか、お前似たようなんこの間してたやろ」
「え、…ああ。同じ種類のやつのこと?これより、ちょっとオレンジ入った……」
「は?」
ポスターに向いていた体を和葉の方へ向けて、笑いかける。
きっと和葉なら、じいちゃん譲りの地黒の肌がわずかに紅いのを見逃さないだろう。

「え、ちょ平次っ」
和葉の制止に耳を貸さず、歩き出す。
こんなこと面と向かってなんぞ死んでも言えるか。
「あれも美味そうやったけどな、今度はこんくらい濃い色にせえよ」
「…………」

振り返りたいが、振りかえれない。
目の前にいた店員が不思議そうに俺と後方を交互に眺めていた。

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戦国バサラ (現代学園もの)

その日、2−Dの放課後は熾烈を極めた。

「ちょっと旦那聞いてるっ!?」
「聞いておる!……政宗殿俺は今日は用事があるとっ」
「だーかーら、明日は俺が駄目なんだってつってんだろっ…Are you OK?」
「ねーねー幸、土曜日って暇?」
「俺とて今日は無理なのでございっ、慶次殿立て込んでいる故また今度にっ」
「えーーーっ」
「だー慶次ちょっと黙ってて、独眼龍!」
「佐助夕食は御館様の分だけで――」
「ぁあ゛ー忍よぉ、割り込むなや。俺が先客だぜ?」
「何言ってんの、あんたが邪魔なんだよどいてくれる?」
「政宗殿、先に佐助と予定を決めるのでさがってくだされ!」
「じゃあさ日曜とかどう?」
「慶次殿っ!!」
「んなもん帰ってから訊きゃいいだろ、」
「ちょ、慶次退いて見えないっ」
「お前等一緒に住んでんだからよぉ、ええ真田」
「い、一緒っなど……っ!!」
「ちょ、独眼龍旦那に何言ったの!?」
「幸ちゃん、予定空いてそう?」

「破廉恥で御座るっぅううう゛う゛ーーーっ!!!」


少し西日がきつくなってきた校舎に、奇声が轟いた。
この騒動を聞きつけた(というより聞こえていた)信玄、 カッコ日本史教師にして剣道部顧問にして幸村と佐助の保護者代表カッコとじ、 が元凶4人に下した制裁は下記の通りだった。

剣道部所属の政宗と幸村の練習試合の向こう一週間禁止。
放浪癖持ち慶次の週末外出禁止。
幸村は早弁一週間抜き。
佐助は信玄の弁当をいつもの1.5倍及び朝一の信玄の鍛錬につき合うこと。

その日、暮れの校舎からは喪心甚だしい4人組が、 すこぶる機嫌のいい巨体の教師に連れられ出てきたとか出てこなかったとか。

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遙かなる時空の中で3 (将臣←望美)

日暮れの西日が見える校舎は、決してそれ以上進みも退きもしない。

「将臣君……」
この場に彼が居ないのが、嬉しいのか悲しいのか。
彼が現れない理由は分かっているけれど。

「でも、」
会いたい。
話がしたい、昔のように。
何も知らなかった頃には戻れなくても。
それでも会って、彼の深い藍の瞳を見て、力強い手に触れて。

「会いたいよっ」

突然京に来た時、どこにいるか分からなかった頃より、ずっとずっと想いは強い。
幼馴染みではあり得ない想いを抱いたからかもしれない。
胸に燻る気持ちを、伝えられないからかもしれない。
他の人じゃ駄目だってようやく気づいた。
彼じゃないと、私は堪えられない。

「将臣君、……会いたいよぉ」
彼はきっとここには来ないだろう。
私も彼も背負うものを手放すことは、もうできない。
けど、3年という月日を平家で過ごした彼は、私以上にとてつもない責任を自分に課している。
「昔から、っそうだったもんね」
兄貴肌で、周りをしっかりまとめて引っ張ってくれる人だった。
だからこそ、源氏は今とても苦労している。
圧倒的有利に進むはずの戦で、勝ちとはいえ見方の被害は甚大だ。

やっぱりすごい、なんて。
絶対に口に出しては行けないけど、まさにその言葉が似合うような統率ぶりだ。
「将臣君、今なにしてるんだろう」
お互いの正体が知れる前、彼は望月にはいつもすぐ寝てくれた。

「満月だから、お月見でもしてるのかなー」
3年で意外と風流人になっていたから、そうかもしれない。
隣には、誰が居るんだろう。
「将臣君の隣……」
誰もいないと、いい。
わがままで嫌な考えだけど、将臣君の隣にいる人なんて見たくない。

「次はいつ会える?」
この時空ではまだ決定していない。
けれど、解っている。
次に彼に会う場所、相見える戦場の名前を私はすでに知ってる。

「会いたいよ、将臣君」

自分勝手でも何でもいい。
それまでに、あなたに会いたい。
たとえそれが、取り返しのつかないものを招いても。

暮れることのない金色の空に物思いは飲み込まれてゆく。

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